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 十二人の怒れる男

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       「 ただひとり“無罪”を主張する8番陪審員 (ヘンリー・フォンダ)」

 
 ご存知の方も多いと思いますが、2009年5月までに日本でも
 裁判員制度が実施される予定です。 
これは、われわれ一般市民が裁判に関わることで司法への理解と関心が高まり、
これまで以上により迅速な裁判が実現されるという効果
を期待する制度です。 
 国民の感覚が反映される
、といった声も大きいですね。

 実は過去にも日本では昭和3年(1928年)から15年間、陪審法による
「陪審員制度」が行われていました。 当時の陪審員は一定額の税金を
おさめた30歳以上の男性から選ばれた12人で構成されていました。
 しかし裁判官が陪審員の出した結論に拘束されることはなかった
 
そうですが・・・。 

  残念ながら凶悪な犯罪が後を絶たない昨今、その犯罪を裁く
裁判も比例し増加傾向にあります。  そのような場面に私たちが
選出され召集される可能性が、今回の裁判員制度の導入により
現実のものとなるのです。 
“その日” がいつ訪れてもいいような心構えは必要かも知れません
なぜなら私たちの評決がその容疑者(被告人)の命を左右する場合が
当然ながらあり、冤罪(えんざい)の可能性もまた
                       ゼロではないのですから・・・・・。

 そうした「人が人を裁く」という 市民による評決を巧みに描いた
有名な映画があります。舞台はほぼ全てが陪審室という一室のみ
――その「法廷もの」とも呼ばれる作品の中でも名作とうたわれている作品、
―― 「十二人の怒れる男」(1957年―監督※シドニー・ルメット
       のあらすじを一部ご紹介しましょう――


   ――― あらすじ ――― (一部)

 
 真夏のニューヨーク――ある法廷で父親を殺したとされる少年の裁判が
行われている。 目撃者による証言が終わり、傍聴していた陪審員たちに
よる最終審議がこれから行われようとしていた。 
法廷から場所を移し、狭苦しい陪審室に集まる十二人の男達。
彼らは今回の陪審のために召集され、互いに顔も名前も知らないのだ。

 ただでさえ暑い真夏なのに、その部屋の扇風機は故障なのか動かない。
 そんな環境も手伝ってなのか、“偶然” 召集された彼らの大半は不満を
あらわに しはじめる。
 ある者は
「子供が親を殺すなんて――いくら弁護したってムダな努力さ。」
 
と言い、またある者は
「今夜ナイターに行くんだ、早く終わらせよう。」と言う。 
「殺人事件の陪審でよかったよ、傷害や窃盗じゃ退屈だからね。」
 
と言う者までいる始末。 こうした無責任な発言が続く――。

 みなそれぞれ職を持ちそれなりに忙しい、早くこの密室から解放されたい
のだ。 男達は検察側の主張に同調し、どうやら “よくある殺人事件” として
「有罪」の評決を出そうと急いでいた。
そして不満をもらしながらも1番から12番まで順番に着席した。
少年の犯罪についていよいよ審議が行われるのである。
 
  ――法律上、十二人の評決の一致が必要である――

 はじめに挙手による決がとられた。 
  「有罪だと思う方は?」 ――11人の手が上がる。
なんと無罪はただひとり、8番陪審員ヘンリー・フォンダ)だけであった。 
有罪とする11人は予想がはずれ、口々に不満と疑問を彼にぶつける。
 「必ずひとりはヘソ曲がりがいるもんだな。」
 「どうして無罪なんだ?」
しかし、8番の男は冷静にこう言う。
 「私が有罪にすると(評決一致で)あまりにも簡単に少年の刑
 (死刑)が決まってしまう。もう少し話し合いたいのだ。」

 すると、あきれ顔の男たち、
 「何を話し合いたいんだ。」
 「100年話し合っても気は変わらないね!」


そしてその8番の男を説得すべく、男たちは順番に「有罪」と考える理由を
 話しはじめる。
 「少年宅の真下に住む老人が犯行時間に物音を聞いている。」
 「犯行時に観ていたという映画の題名を覚えていないなんて
 おかしい。」
 「向かいの窓から犯行を目撃した女性もいるんだぞ!」

10番の男は 「ヤツはスラムで生まれ育ったろくでもないガキだ!」
  
という偏見に満ちた意見すら理由とした。

 それでも8番の男は引き下がらない、そして言う――
 「状況からすると有罪に見える。 でも、もし目撃者の女性や老人の証言が
 間違っているとしたら? ――人間なら間違うこともあるはずだ。」

 彼はもっと慎重に検証したいと言うのである。

――凶器とされるナイフについても再検討することになった。
 「あの晩に少年が買ったと認めているではないか!」
と、 これについても「有罪側」の主張は検察と同じ意見。
そしてそのナイフが部屋に持ち込まれた。
 「誰かが同じようなナイフで刺したということだってありうる。」
と、8番は他の人間の犯行の可能性を語る。
 しかし、「(こんな)珍しいナイフなんだぞ!」と、
 まるで「少年が刺したに決まっている」とでも言わんばかりの
 「有罪派」。


すると、8番は背広のポケットから同型のナイフを取り出しテーブル
 に突き立てた!
 有罪派の陪審員たちはどよめく――
 「おぉ~っ、ど、どこでそれを!」
 「同じナイフがあったとは・・・」
8番は静かに説明する、
――「少年宅の近くの質屋で買ったんだよ。」 と。
またしても彼は少年以外の犯行の可能性を示すのだった。

ここで2度目の評決がとられた。 
 しかし今度は用紙に無記名での投票である。 
 ――結果、なんと無罪を主張する者がひとり増えたのである。 
ひとり増えたことにより有罪派の10人はにわかに動揺しはじめる。 
それは、すぐにでも帰れそうであった“よくある犯罪”の陪審が長期戦に
なることを意味し、そう単純ではない事件の真相に男たちが徐々に
気付きはじめていることを示しているようだった―――。
                   ・
                   ・
                   ・

  この作品では父親を殺した容疑の少年の罪を確定する重要な
立場としての十二人の陪審員たちの熱い議論が描かれています。
 当初、検察側の主張する有罪弁論を指示していた11人の陪審員たち
ですが、目撃者である老人と女性の証言の信憑性に疑問を抱いたひとり
の陪審員の説得力のある推測
からどんどん主張が
ゆらぎます。      ――疑わしきは罰せず――
 ここにこの作品の訴えたいテーマがあるのかも知れません。 
とかく人間は偏見や思い込み、そして状況証拠には意外にもろく
流されやすい
ということを――。
確かな目で冷静に物事を判断する必要性のあることを――。

 これから実施されようとする裁判員制度――私たちは強い信念と問題意識
を持ち、責任の重さを自覚して新制度に臨みたいものですね。

 とはいえ、人間の強さや弱さ、そして正義感と傲慢さなどの
“人間らしさ” がよく描かれているこの作品は、映画として存分に
楽しめるものになっています。 
何度も観ている方はもちろん、未見の方はさらに興味を持ってご覧になれる
と思いますよ~おススメな作品です! 
週末、お近くのレンタル店で早速探してみてはいかがでしょうか?


 ※ シドニー・ルメット監督は子役で活躍し、その後テレビ・ドラマを中心に
制作していましたが、「十二人の怒れる男」で映画界へ初参加――この作品
の ヒットとともに注目を集める映画監督のひとりとなるのです。 
他の主な作品では、「質屋」(1964年)「セルピコ」(1973年)、
「オリエント急行殺人事件」(1974年)などがありますね。


     < 他のおススメ法廷映画 >

 「法廷もの」と呼ばれる作品は意外に多いですね~、
その中でも私がおススメしたい作品をいくつか挙げてみます♪

・  「情婦」(1957年)・・・・・ワイルダー監督の名作。
・ 「評決」(1982年)・・・・・同じルメット監督による作品。
・ 「12人の優しい日本人」(1991年)
   ・・・三谷幸喜 作・演出による「十二人の~」のパロディ。
・ 「アラバマ物語」(1962年)・・・主演:グレゴリー・ペック。
・ 「推定無罪」(1990年)・・・・・主演:ハリソン・フォード。
・ 「真実の行方」(1996年)・・・主演:リチャード・ギア。

 
☆ 今回の選曲はビートルズのラスト・アルバム「アビィ・ロード」から。
   

 ♪ Come Together.

  (言わずと知れた、「アビィ・ロード」のオープニング曲。
 チャック・ベリーの「You Can't Catch Me」の盗作 !? として
 裁判にもなりましたが、後に和解。)

十二人の怒れる男 DVD 十二人の怒れる男

販売元:20世紀フォックス・ホーム・エンターテイメント・ジャパン
発売日:2006/11/24
Amazon.co.jpで詳細を確認する

 ☆ 「法廷もの」の代名詞ともなっている名作!
   彼ら十二人の熱い議論の行方は・・・・・!?


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 アメリア・イアハート

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1903年12月アメリカのライト兄弟により、 ついに人類は長年の夢であった空への
切符
を手に入れました。 人類が空を飛行するというあらたな手段を得た瞬間
だったのです――
― しかし飛行機を手にした我々の喜びもつかの間、その後の第一次世界大戦
では戦闘機という強力な「兵器」として改良され利用されてしまいます。

                       「イラスト― アメリア・カット(ショート・カット)も流行に 」

 こうした文明の進歩は戦時下における兵器の規模の拡大へ残念ながら
つながります。 逆に、兵器開発による技術革新がもたらす便利な生活もまた
皮肉なことです・・・。

1914年に始まった第一次世界大戦では、人類史上初めて毒ガス戦闘機
そして強力な威力を持つ爆弾などの大量破壊兵器が登場しました。
 言うまでもなく人的な被害もそれまでの戦争にはない残酷で大きなものに
なってしまうのです――。

 この恐るべき大戦がようやく終結し、人々がもとの平和な暮らしに戻ろうと
していた1920年代――アメリカではさまざまな分野で人々の「躍動」が始まり
ます。 
それは経済や文化にとどまらず、希望ある探険や飛行が隆盛を極めることから
もその「躍動」を感じられるのです。

 1927年5月20日(~21日)、世界を仰天させる偉業が達成されます。 
アメリカの飛行家 チャールズ・リンドバーグによる「大西洋単独横断飛行」
が成功する
のです。
「翼よ、あれがパリの灯だ」~という有名なセリフの真偽はともかく、この
フライトが象徴することは、人々が大戦の痛手から立ち直り再びロマンへ
の関心が高くなったということを意味します。 

 それから5年後の1932年5月20日、リンドバーグと同じルートで単独飛行
に挑戦しようとする一人の女性が現れます。 
その女性こそ、伝説の飛行家として知られるアメリカ・カンザス州出身の
アメリア・イアハート なのです。 
1932年当時34歳のアメリアでしたが、その飛行歴は長く、業界では名の
知られた女性でした。

 当時のアメリカでも女性の地位向上を目指す気運は高まっていました。 
そうした状況へ 登場したアメリアは女性達の期待と憧れの的だったのです。
 そんな女性達の熱い眼差しを一身に背負って、カナダ・ニューファンドランド島
のハーバー・グレース(グレース湾)から飛び立つのでした。 

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彼女の愛機である深紅のロッキード・ベガは、
当時の飛行機としては高性能として知られています。 
その信頼するベガと一体となり、途中の強い北風や寒さ、そしてさまざまな困難に遭いながらおよそ15時間後アイルランドに到着、見事
女性初の大西洋単独横断飛行に成功するのです。 

 




しかしアメリアはこの偉業に満足することなく、「世界一周」という大きな目標
密かに決意するのでした。 
彼女自身、自分に対する世間の注目が女性の権利を高める効果があること
を十二分に理解していたのです。
1935年1月11日にはその「前哨戦」とも言われるハワイ(ホノルル)から
カリフォルニア(オークランド)までの単独飛行にも成功します。 
(※ 1月11日は、彼女の功績と精神を記念してアメリア・イアハート・デー
                                     
とされている)
そして1937年5月21日、念願の「世界一周飛行」へ向かうのです。

 当時アメリアはこの大計画について、

    「飛行記録が更新される時は、将来のために
              犠牲になる覚悟を持った人が現れた時よ」


              と、今考えると意味深に語っています。

 この飛行ではベガではなくロッキード・エレクトラ双発機)に乗り込んでの
出発でした。  (同乗者は優秀な航法士、フレッド・ヌーナン
二人は東周りで順調に飛行を続け、6月末にはニューギニアのラエ飛行場に
到着。 燃料補給や整備をし、7月2日にホノルル方面へ向けて飛び立ちます。 
ここまで計画の3/4を飛行していた二人に対して、アメリカ国民は無事の成功
を信じて疑わなかったのでした。

  ――まさかこれが彼女のラスト・フライトになろうとは
                誰ひとり想像すら出来なかったのです・・・・・・

  その夜7時をまわった頃、思いがけない電文が受信されます。

       「・・現在地点が分からない・・・」 
       「・・・燃料が不足している・・・・・」


              そして消息が途絶えたのです―――。

 詳しいやりとりは手元の資料にありませんが、管制ではアメリアとフレッドが
広い太平洋上で航路を誤った、という見解に達しました。
  そして最悪でも洋上へ着水していることを願ったのです。

 連絡を受けた時の大統領ルーズベルトは、すぐさま二人の救出へ全力を
入れます。沿岸警備隊、海軍、そして空からも400万ドルをかけたと言われる
大捜索が展開されました。 
   しかし、アメリアとフレッドを発見することはなかったのです――。

 おりしも捜索エリアは日米の間でも緊張の高まりつつあった水域であり、
一説には着水したアメリア達を日本側がスパイとして拘束したのでは??と
ささやかれるほどのキナ臭い時期でした。 
ご存知のとおり、その2年後の1939年、ドイツ軍によるポーランド侵攻
きっかけに、残念ながら世界は再び戦争へと突入していくことになります。
1941年12月、ついに日米が交戦すると、それまでの冒険飛行という夢を
乗せたプロジェクトは余力をを失っていくのでした――。


 アメリアは出発前にこんなことも言っています。

       「これが私の最後の長距離飛行よ」 と・・・


 アメリアが行方不明になってから一年後、国際ゾンタ
              (女性の地位向上を目的とする国際的な奉仕団体)
アメリア・イヤハート基金を発足させます。 これは毎年航空関連専門の
女性研究者などを認定し支援する制度です。
 
 あれから70年――彼女のラスト・フライトは悲しいものでしたが、
その偉業と志はまさに女性の職業的、社会的地位の向上に寄与し、
勇気を与えた素晴らしいものでした。
 
 アメリアの理念は、
          こうして毎年確実に受け継がれているのです――。


    「心の平和を与える代償として、
                 人生が要求するのは勇気である――」

     
                               アメリア・イアハート




☆ 今回は数あるビートルズの曲の中でも
             唯一のインスト・ナンバー~♪


  
♪ Flying. 
  
(ゆったりとしてシンプルながらもセンスを感じますね!)

     ☆ Flying. (音・映像)


 

アメリア・イヤハート―それでも空を飛びたかった女性 Book アメリア・イヤハート―それでも空を飛びたかった女性

著者:リチャード テームズ
販売元:国土社
Amazon.co.jpで詳細を確認する


 ☆ 飛行家として女性の地位向上にも尽力した
    勇気ある信念の人――アメリアの生涯。


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  街 の 灯

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        「イラスト - チャップリンとヴァージニア・チェリル」

 今年のはじめの映画紹介は、「街の灯(ひ)」と決めていました。
本当はチャップリンの人物紹介を記事にしようと考えていましたが、大好きな彼の記事はとても一回では収まりそうにありませんでした(笑)ので、中でも好きな作品である「街の灯」を取り上げてみました。
 とは言っても、この映画こそあらためてご紹介する必要のないほど有名で感動的な作品ではありますが・・・(汗)。

 「街の灯」が公開された1931年は、サイレント(無声)からトーキー(発声)映画へまさに移行しようとする時期でした。 1920年代後半から始まったトーキーへの怒とうの転換劇は人々の価値観を揺るがす社会現象にまでなり、時代は一気にセリフ音声と音楽が入るという、より表現豊かな作品を生み出すようになるのです。 

 また、1929年10月24日に起こったニューヨーク株式市場での株価大暴落ブラック・サーズデー)――世に言う「暗黒の木曜日」により経済不況が始まると、やがて世界大恐慌へと広がるという混乱した時期でもありました。 
 (実際、「街の灯」の撮影中にこの株価暴落は起きています)

 そんな時代背景の中、チャップリンはかたくなにサイレントへのこだわりをみせますが、時代の大きな動きの中でさしもの彼もこの作品から一部音楽や効果音を挿入し公開に臨んだのでした。 
 もちろん、不況の影響である失業者の増加という社会風刺もチャップリンはシニカルに表現していますね。

 さて、この「街の灯」をご覧になっていない方は少ないと思います。 おそらく30代以上の方であれば、一度は観た記憶があるのでしょう。 (もっとも、10代の方であれば別ですよ~)
今回はぜひ、全体を通したあらすじでご紹介したいと思います~。
 

 
 原題――「City Lights.」 というタイトル表示の後、「平和と繁栄」というなんとも皮肉っぽい(笑)記念碑の除幕式のシーンから映画は始まります。
 幕が上がるとなんとそこには主人公の チャーリー(チャップリン)がその記念碑で居眠り中~~当然、式典は混乱し(笑)いつものコミカルなチャップリンがいきなり魅了してくれます。

 その日の午後、通りへ繰り出したチャーリーは街角で盲目の花売り娘(ヴァージニア・チェリル)と出会い、彼は美しく健気なその娘にたちまち恋をしてしまうのでした。

その夜――埠頭で腰をおろすチャーリーの前で酔っ払って飛び込もうとする自殺志願(?)の男をなんとか助けたことから知り合いとなった二人は、意気投合して男の屋敷へ向かいます。 
 そう、その自殺志願の男は大金持ちの主人(ハリー・マイヤーズ)だったのでした。 しかし気前のいい彼と友達になったとはいえ、酔いがさめると別人のような人格となるタチの悪い人物でもありますが・・・(汗)。

 さて、花売り娘のことが気になるチャーリー、彼女が経済的に苦しいという事情を知り、手助けをしようと街の掃除の仕事に就きます~必死に金持ちな紳士を演じようとするのです。 
ある日の昼休憩に娘の部屋に行き、買い物してきた食材を届けます。 そしてそこで、“ある医師が盲目の治療に成功” という新聞記事を目にするのですが、同時に 視力を回復したいという彼女の願いもチャーリーの胸に響くのでした。
また、明朝までに家賃を納めないと立ち退きとなる切羽詰った状況も知るのです――

 しかし職場へ戻ると始業時間に遅れてしまい、あえなくクビとなってしまいます。
そこへ荒くれ者の集う裏社会のボクサーへの勧誘があり、チャーリーはその夜試合に臨むことになるのですが・・・結果はノックアウトされてしまいます(汗)。
ここでのチャップリンのムチャクチャなボクシングがまた素晴らしいですね~、殺伐としたリング上で真面目なのかふざけているのか分からない天性の動き(!)で相手を翻弄します。
このシーンだけでもとても有名で印象的な場面~こんなボクシングの試合はいまだかつて見たことない・・・というより今後もないのでしょうね(笑)。

 その後チャーリーは再び酔っ払った金持ち主人宅に戻り、1,000ドルという大金を工面することができますが、運悪く侵入してきた強盗に遭うのでした。 しかも駆けつけた執事に疑われたチャーリーはなんとかその場を逃げ切り、娘に大金(目の治療費)を手渡すことに成功します。 
ところがその帰りにチャーリーは警察に捕まってしまうのでした。


 時は流れ季節は秋―――刑務所から出所したチャーリーは久々に街へ向かいますが、相変わらず子供たちにさえバカにされてはからかわれる始末。 
そんな彼はふと、街角にオープンしていた「花屋」に気付きます。
 なんとそこには―――
      あの花売り娘が店を持ち立派に働いていたのです!

 その少し前、偶然にも花屋の店内ではその娘が祖母に、“親切でまるで王子様のようなあの恩人の紳士との再会を期待する” ような雑談をしていたばかりでした。  そんなこととは露知らず、 立派になっていた娘に見とれるチャーリー・・・
彼の脳裏には、それまでのさまざまな出来事と想いがよみがえっていたのでしょう。
そしてここでもそんなチャーリーに対する残酷なまでの娘のセリフが用意されます――「この人、私に気があるのよ!」 
                         (そ、そんな・・・)
ただ救いなのは、窓越しであるためこの言葉はチャーリーへは届いていないことでしょうか・・・(もちろん、娘も悪気はないのですが)

 娘はそのじっと見つめる “浮浪者” を哀れんで、一輪の花と小銭を手渡そうと外へ出ます。
そして彼の手に触れた瞬間、「ハッ!」 と彼女は気付くのです!
 懐かしいあの手の感触~みるみる表情の変わる娘・・・・・
      
      娘 「あなたでしたの?」

 チャーリー 「見えるようになったんだね?」

      娘 「ええ、見えますわ・・・」

   チャーリーのはにかみながらも見つめる優しい笑顔――
   娘の一瞬の戸惑いのあとの全てを悟った安堵の表情――


それは、治療して戻った視力だけでは見えなかった彼の本当の優しさを感じた素晴らしい場面であり、映画史に残るラスト・シーンでした。 ~どうしても涙があふれますね。
まさに、街角に咲いた一輪の花であり「灯り」だったのかも知れません。
 (その後の二人の展開はもちろん分かりません、我々それぞれの感性でストーリーをつなげていきましょう~)

 時代に翻弄され、浮浪者であっても人間としての誇りと優しさをしっかりと備えたチャーリー。(いきすぎた行動もありましたが・・笑)
弱者に対する無償の愛と援助の実践は、現代に生きる我々へ強烈なメッセージを投げかけます。
 
喜劇役者として出発したチャップリン――社会風刺やヒューマニズム、そして人間愛を満載した彼の数々の作品は、今なお、そしてこれからも世界中の人々に深い感動を与え続けることでしょう。
 まさに20世紀の映画界が生んだ不世出の天才なのです―――

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      ―― あとがき ――

 天才チャップリンの他の作品も感動的で味わい深いものが多いですね~、どれも好きですが、中でも「黄金狂時代」「モダン・タイムス」、そして異色の(?)「殺人狂時代」「独裁者」などなど、不朽の名作揃いです!
彼の制作にかける意気込みは並々ならぬものがあり、ワン・シーンに数時間~数日をかけることもしばしば・・・といったエピソードも数多く、完璧を求めるそのこだわりの込められた中期を代表する
 チャップリン渾身の傑作――「街の灯」でした。



☆ 今回の選曲は、はにかみ屋でなかなか本心を伝えられない
 チャーリーの心境 !?

   P.S. I Love You.

 (初期 ビートルズのセンスあるハーモニーが魅力!)

 

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☆中期チャップリンのエッセンスが凝縮された渾身の傑作!
   感動のラスト・シーンを何度でも感じて下さい♪


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